学びの形
2025/11/13
人生の質はあなたが居心地を良さを感じる不安定の量に比例する
この言葉は、ちょっとした哲学のようでいて、実はとても日常的なリアリティを持っている
人は安定を求める。確実、安心、安全。これらは人間の心を柔らかく包んでくれる。けれど、そのぬくもりだけに浸っていると、人生はいつの間にか“停止”に似た状態へ向かう。
逆に、不安定にはザラっとした手触りがある。予測できないこと、初めての挑戦、慣れない環境、失敗する可能性。これらは一見すると避けたくなる。でも、この“不安定”という揺れの中にこそ、人の可能性は静かに芽を出す。
たとえば、先生がクラス会議を初めて導入するときを想像してみよう。慣れ親しんだ指示・管理型のスタイルのほうが、はるかに安定している。日々の進行も読みやすいし、トラブルも最小限に抑えられる。
しかし、子どもたちが本当に育つ瞬間は、教師が“完璧なコントロール”を少しだけ手放したときに訪れる。自分で考え、自分で決め、自分で責任を持つ。その主体性は、安定した環境だけでは育ちにくい。そこにあるのは、ほんの少しの不安定さ、つまり「どうなるかわからない」という余白だ。この余白は、実は学びと成長の宝箱だ。
不安定を心地よいと感じられる人は、不安定を“不快”として放り投げない
自分の心に芽生えた緊張を丁寧に扱い、ひとつひとつ名前をつけ、意味づける。その姿勢は、自分の内側に灯をともすようなものだ。暗闇が怖いのは、見えないからであって、一度目が慣れれば徐々に恐怖は薄れていく。
不安定も同じで、「これは成長の予兆なんだ」と理解できるようになると、揺れそのものが自分の味方になる。
“自信がついたら挑戦します”という言葉を耳にすることがある。でも、多くの場合は順番が逆だ。挑戦の中で揺れ、不安を抱えつつ踏ん張った経験が、あとから自信になって返ってくる。自信とは、過去の自分が積み重ねてきた“不安定の回数”の結果だ。
つまり、自信はギフトではなく副産物。不安定の中で、心が何度も折れそうになりながら、それでも前に進んだ人にそっと届く報酬だ。
不安定を受け入れ始めると、人は「怖いけど面白い」「緊張するけどワクワクする」という不思議な感覚に出会う。
この矛盾した感じが、実は変化のスタートシグナルだ。
あなたの可能性が新しい扉をノックするとき、人はこうした“混じった感情”を味わうものだ。
とはいえ、不安定の世界にずっと身を置くと、当然ながら疲れる。そこで大切なのは、「安全地帯」と「成長地帯」を自分の中に両方つくることだ。
これは筋トレに似ている。ずっと力を入れ続けると壊れてしまうけれど、休ませながら負荷をかけると筋肉は強くなる。心もまた同じ。安全に戻る日、少しだけ負荷をかける日。その波があることで、不安定はいつの間にか“慣れた揺れ”へと変わっていく。
未来を切り拓く人ほど、この揺れを嫌わない
安定だけを追い求めた人生は、確かに安全だが、景色が変わらない。
不安定へと踏み出す人生は、怖さと同時に広がり続ける空のような開放感がある。
不安定は、あなたの敵ではなく、あなたの後押しをしてくれる存在だ。
揺れながら進むうちに、心はしなやかさを手に入れる。視野も広がる。判断力も磨かれる。
そして気づけば、不安定だった場所が“新しいあなたの居心地のよい場所”になっている。
人生の質は、揺れの中での姿勢で決まる。
怖さを抱えたまま一歩を出せた自分を、どう扱うかで変わる。
不安定さを味わいながら、「この先には新しい景色がある」と信じて進む人の人生は、必ず豊かになっていく。
次に選ぶ行動が、少しだけ勇気のいるものでありますように。
その小さな揺れこそが、あなたの未来の質を決める。



